大判例

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東京地方裁判所 昭和38年(ワ)6660号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決要旨〕約束手形金債務につき更改契約が成立したときは、手形所持人は自己の前者に対し手形法上の償還請求することはできない。

〔事実及び理由〕被告協和電子株式会社は(1)金額一六万六七五〇円 (2)金額一四万三、〇〇〇円の二通の約束手形を受取人白地で振出し、原告は満期前に右各手形の所持人として受取人らんに被告武田と補充した。ところで原告は右各手形の振出当日である昭和三八年三月二七日右被告会社およびその代表者である被告酒枝との間に、同被告両名を連帯債務者として、本件二通の手形金債務金三〇万九、七五〇円を消費貸借の目的に改め弁済期を昭和三八年七月一〇日と定めた。そして原告は(1)の手形について満期に支払場所で支払のため呈示したがその支払を拒絶せられたので、これを受戻し、被告武田に対し償還請求をし、(2)の手形については支払のための呈示をしなかつた関係上原因関係に基き貸金債権として請求をした。

被告武田は右(1)の手形の償還請求にたいする抗弁として、本件二通の手形については原告自ら主張するように、手形の振出人である被告会社と所持人である原告との間で、手形債務を消費貸借の目的に改めたのであるからこれにより本件手形の主たる債務は消滅した。

かように主たる債務が消滅した以上原告に償還請求権はないから、被告武田には本件(1)の手形の償還義務はないと抗弁した。

判決は被告の抗弁を採用してつぎのとおり説明している。曰く。

「原告が本件各手形の振出人である被告会社との間に、当該手形債務を消費貸借の目的に改めたことは当事者間に争がない。そこで、約束手形の所持人が振出人との間で、手形債務を消費貸借の目的に改めた場合、前者に対し償還請求(本件においては、再償還請求)できるかを考えるに、準消費貸借契約が成立すると、新債務が生じて旧債務が消滅するのであるから、振出人の手形債務を消費貸借の目的に改めるときは、当該手形債務が消滅すること明らかである。ところで、手形の振出人の債務(主たる債務)と裏書人の償還義務とは別個独立の債務ではあるが、元来所持人が償還請求するためには、当該手形が健全であること(弁済、免除、時効等の債務消滅事由のないこと。)を要し、したがつてまた、償還請求に応じて手形を受け戻した者がさらに前者と有効に求償し得べきものでなければならないと解すべきであるから、手形の主たる債務を消滅させた所持人は、償還請求(または再償還請求)できないといわなければならない。かようにして、本件において、原告が前述のように、準消費貸借契約により、主たる債務を消滅させておきながら、(1)の手形を訴外田中に裏書譲渡し、その後同訴外人からの償還請求に応じて手形を受け戻した上、被告武田に対し再償還請求することはできないものといわざるを得ないから、(1)の手形に関する請求は理由がない。」(菅本宣太郎)

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